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Ceramics Art and Perception 2005 ISSUE 61, p.60-62

Kayoko Hoshino’s  Delicate Utensil                   Article by Peter-Paul Koch  

Translated by Satoru Hoshino

星野佳世子の、繊細な器    論説 ペーターポール コッホ  日本語訳 星野 暁

星野佳世子の作品はユニークである。それは明らかに繊細で美しい日本の陶芸に繋がるものである。星野の作品は規則的な切り込みとデリケートなアースカラーと微妙な造形言語によって特徴付けられる。また彼女の作品の多くは鉢や壺あるいは箱のような実用陶器と明確に関係を持って表現されている。星野はまったくの抽象的な作品と距離を置くことに躊躇しない。彼女の抽象的な作品はふだん、彼女がよく山の中を歩くときに見付ける自然の形象や模様を基にしている。かたちがより抽象的なときでも、またより伝統的なときでも、彼女の作品はその生気を失わない。

星野佳世子は1949年日本の南端の九州で生まれた。彼女は京都の大学で西洋史を学ぶ、しかし京都はまた日本の陶芸の中心都市でもある。彼女はその相反する環境の中でくり返し陶芸と出くわす。そのことは二年後、彼女が学ぶ道を変更し陶芸を志すということに繋がる。1971年から1973年まで彼女は結婚した陶芸家の星野暁と、藤平陶芸で勉強した後、一緒にスタジオを設立する。

 最初彼女は主にカップや皿といった伝統的なものを作った。そのときの彼女の仕事は大抵石膏型による型起こしであった。後に彼女は自由な造形の作品に転向する。そこでは新しい形を実際に作る前に、それを視覚化出来るように最初にミニチュアオブジェで作られる。この時期、彼女は主として花器や半磁器による皿の仕事をした。

そして陶芸の仕事に携わって15年後、彼女は1997年の朝日クラフト展に、藁屋根の家のイメージで作られた様々な大きさの陶箱を出品し,グランプリを獲得する。それから彼女はいま知られている釉薬を使わない、しかし時にシルバーラスターを塗った作品の仕事に向かってもう一歩、歩を進める。

また受賞後、間もなく彼女はミニチュアを作ることを止める。なぜなら彼女は直接土に導かれる方法でより興味深いダイナミックな作品を作ることを実現したからだ。それ以来、彼女はまず土の塊を手に取るところから作ることを始める。

星野はこの過程で彼女と土との間の関係が変化したと感じる。初期の作品に置いては彼女が頭に浮かんだアイデアが一番重要だった。そして土それ自身は何物でもなく、アイデアを表現する媒体であった。今日彼女は作者と土の間の相互作用が最も重要であると感じている。彼女はアイデアを探し求めない。アイデアは土という素材を通して彼女に見出される。

そのときから、前方に希望の星が登り始める。彼女は1999年アムステルダムで行われたセラミックミレニアムに参加したギャラリー・カーラコッホのグループ展に出品する。これは2000年の祝日蘭通商条約400年展への参加としてくり返された。それ以来、アムステルダムのギャラリー・デビットフットが彼女の夫の星野暁の作品を発表する同時期、ギャラリー・カーラコッホは星野のヨーロッパでの発表を受け持っている。2004年にも二つのギャラリーは星野達の展覧会の同時開催を企画した。

 オブジェの仕事を始めた時より星野佳世子は無釉の焼締めをもくろみ、3,4種の土をミックスして使う。その土の塊はそこに隠れた形をすでに持っており、彼女の手の最初の幾つかの動きがその興味深い構造を引き出すようだ。こうして彼女は新しい形への出発点を確保する。そのプロセスは土の中に隠れた未知の形を、アーチストが良いと予測する、しかし二次的なものとして土が扱われる考え方に代わって、土そのものが押し進め、探り出すことを彼女に促す。彼女は土を捏ねたり、切ったりするプロセスによって表出されるまだ見たこともなく、ほとんど知られず眠っている形を発見することに興味を持っている。彼女自身はそれを、つまり「作者の考えを通してではなく、作者の手を通して見たことのない形が出てくる」と説明する。

一度彼女は土の塊をおおざっぱにカットし、それからはっきりした形に作り始める。彼女は土の中に見出される形に向かってより意識的に仕事を進める。彼女の仕事の秘密の部分はナイフでなくワイヤーによって塊をカットすることにある。彼女はこの手順がナイフによる仕事より一層の驚きと予期せぬ形を与えてくれると感じている。

新しい形は星野自身の驚きによってもたらされる。しかし彼女にはふだん森や山を歩く時に見出された幾つかの形が心の内にある。だが彼女は意識的にこれらの形を土のうえに強制的に表すことはせず、むしろ作品を作るプロセスのガイドラインとしてそれを参考にする。なぜ彼女の形がいつも自然でまた論理的に表されるかは、仮にそれらがどんなものであろうとも、つまり彼女が作る鉢や花器やより抽象的な橋のような作品において、その形の持つ面や角度が、たとえ伝統的な方法でないにしても、観察者としての完全な感覚を常に持って作られるからだ。

土の塊から出発して最終的な形がイメージされ始める時が最後の仕上げの時である。そして作品が少し乾いた後、星野はもし必要ならば形を捕捉する。そしてヤスリで切り込む特徴のある文様を入れる。彼女は作品に施釉しないで最高温度1225℃の強還元の窯で焼き上げる。次に低温焼成する前に作品の幾つかの面にシルバーラスターを塗る。

その結果、興味深い美しさを持つ作品が生まれる。彼女の作品の全てが同じアースカラーで、そのほとんどが彼女のトレードマークである微妙な直線の、しかし決して類似に終わらない切り込みを携えている。たとえ二つの作品、例えば花器が明らかに同じ形を持つ時でも、常に微妙な差異がそこにある。実際、一つの作品の面や線や角度が他の形と似ているものは一つもない。またある作品はシルバーラスターで特別に完成される。それはいつもその端から端まで観察され続けた微妙なバリエーションである。たとえあなたがある作品を知り、それを所有しても、また似た形の作品が現れても探検する興奮は続く。